最近では「持っているだけで資産的にマイナスになる不動産」のことは「負動産」と呼ばれています。
もっともイメージしやすいのは、地方にある戸建ての空き家です。
もともと住んでいた親は亡くなったものの、売却も出来ずに子供が固定資産を払い続けているような状態が、負動産の典型例です。
また、それに限らず「いまよりも価値が下がっていく不動産」も、大きな枠で不動産といっていいでしょう。
すでに国内にある「所有者不明」の土地は九州の面積を超す広さになっていますが。今後はさらに、マンションも含めた負動産が大幅に増加していく可能性があります。
では負動産が増え続ける背景とはいったん何でしょうか?
増え続ける空き家と2025年問題
まず、切り離せないのが空き家問題です。
主な原因は2つ
1つ目は人口減少と超高齢化社会、さらに結婚数の減少による世帯数の減少です。
国立社会保障・人口問題研究所が2018年に発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、日本の世帯数のピークは2023年の5,419万世帯と推計され、その後は減少に転じ、、2040年には5,076万世帯になる見込みです。
世帯数が減れば、それだけ必要な家の数も減るので、おのずと空き家は増えるでしょう。
2つ目は、すべての団塊世代が2025年ころまでに後期高齢者の仲間入りを果たす「2025年問題」です。
世帯数が減り始めるのに、高齢者世帯が増えるということは、高齢者が亡くなったあとの家、イコール空き家が増え続けるということです。
野村総研の2019年の予測では、2033年には空き家率は、17.94%に上昇する可能性があるとされています。
都心の一等地ですら売却できないことも
いっぽうで、新築される住宅はそこまでへっていません。
今後は多少減ることが予想されますが、空き家の増加率を考えると微減に過ぎないといえるでしょう。
日本は「住宅過剰社会」に突入しています。
そこに追い打ちをかけるのが若い世代の価値観の変化です。
これまでの日本人は「不動産、とくに土地は、持っていれば将来的に価値が上がりこそすれ、下さがることはない」という不動産神話を持っていましたが、この神話はバブルとともに吹き飛びました。
バブル崩壊後に生まれた世代も大人になり、「子育て世代になったらローンを組んで住宅を購入する」という旧来のプランは主流ではなくなるでしょう。
カーシェアリングサービスが普及しているように、住宅も所有から利用へとか変わってきています。
今後ますます、不動産は供給過剰に陥いることが予想されます。
そうなれば当然、不動産市場全体が下落。
都心部の一等地にある家でも負動産の予備軍になりえます。
既に都心部でも、木が鬱蒼と生い茂った空き家を目にするようになりました。
相続争いの問題もあるのでしょうが、もし所有者や相続人が「場所がいいから売ろうと思えば高く売れる」と思っていると危険です。
需要自体が減っているなか、不動産業者も、いつ空き家状況が解消するかわからない物件より、いま売りに出ている土地や家を優先して扱います。
都心でさえすでに「その気になればいつでも売れる」という時代ではなくなってきています。